歯周病と全身疾患
歯周病というと、「歯茎の病気」と捉えられがちですが、実は顎の骨が溶けてしまう病気でもあります。
治療をせず放置していると、支えられなくなった歯が抜け落ちます。
さらに歯周病菌は、歯周ポケットから血管へと進入し、全身の臓器へと悪影響を及ぼします。
歯周病との関連性が報告・指摘されている病気は、
- 糖尿病
- 狭心症・心筋梗塞
- 脳梗塞
- 誤嚥性肺炎
- 骨粗鬆症
- メタボリックシンドローム
など多岐にわたります。
また女性の歯周病の場合、早産や低体重児出産のリスクも高まります。
健康とQOL、そして場合によっては命を危険にさらす合併症を予防するためにも、歯周病の予防・治療が重要になります。
具体的な病気について
糖尿病
歯周病との関連が特に深い全身疾患が、糖尿病です。血管に入り込んだ歯周病菌は、血糖値を下げてくれる「インスリン」の働きを阻害します。
歯周病が重症化している人は、糖尿病治療における血糖コントロールがうまくいかないことがあります。
言い換えると、歯周病の予防や治療がきちんとできている人は、糖尿病治療でも結果が出やすくなります。
当院は岡山県糖尿病の医療連携体制を担う医療機関に登録されています。
糖尿病の慢性合併症である歯周病治療に力を入れております。
また、日本糖尿病協会に所属しており、院長は日本糖尿病協会登録歯科医ですので医科との連携もスムーズに行うことができます。
狭心症・心筋梗塞
生活習慣病を背景に進行した動脈硬化によって心臓の血管が狭くなるのが「狭心症」、詰まってしまうのが「心筋梗塞」です。
血管に入り込んだ歯周病菌によって、動脈硬化を引き起こす物質の産生が促進されることで、狭心症や心筋梗塞が起こりやすくなります。
脳梗塞
狭心症や心筋梗塞と同様に、歯周病菌によって動脈硬化が進行することから、脳の血管が詰まる「脳梗塞」も起こりやすくなります。
歯周病の人は、そうでない人と比べて約3倍、脳梗塞のリスクが高くなると言われています。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、細菌が付着した食べ物などが誤って気管・肺に入ることで発症する肺炎です。
食べ物が気管や肺に入ることは健康な人でも起こり得ることですが、歯周病の人は、その食べ物に歯周病菌が付着しているため、誤嚥性肺炎を発症しやすいのです。
特にご高齢の方にとっては、命にかかわる疾患です。
骨粗しょう症
骨粗しょう症の大きな原因として、閉経に伴うエストロゲンというホルモンの減少が挙げられます。
そしてこの閉経をきっかけとする骨粗しょう症の方は、そうでない人よりも歯周病が進行しやすくなることが分かっています。
特にご高齢の方は、骨折が寝たきりの原因となることも多いため、歯周病の治療とともに、骨粗しょう症の治療にも取り組むことが大切になります。
当院では、パノスコープというAI解析ソフトウェアを
導入しています。
パノスコープは、歯科医院で撮影された患者のパノラマX線画像をAI解析し、顎骨の脆弱度をチェックするソフトです。
骨粗しょう症のリスクを早期に発見しやすくなります。
当院では、骨粗しょう症のリスクのある方を早期に発見し、地域のかかりつけ医や専門医療機関へ紹介し、患者様の歯の健康のみならず、全身の健康にも貢献していきます。
メタボリックシンドローム
はっきりとしたメカニズムの解明には至っていないものの、歯周病によって作られる毒素やサイトカインが、血糖値の上昇およびメタボリックシンドロームの原因となっているとの指摘があります。
早産・低体重児出産
歯周病の女性は、そうでない方と比べて早産・低体重児出産のリスクが約7倍も高くなります。
血液中に入り込んだ歯周病菌が、胎盤を介してお腹の赤ちゃんに感染することが影響しているとの指摘があります。
歯周病にならないようにするには
糖尿病をはじめとする上記の合併症を防ぐためには、歯周病にならないことが何より大切になります。
そして歯周病を予防することは、実はそれほど難しいことではありません。
予防の中心は、セルフケアと定期的な歯科検診です。
注意が必要なのが、どちらが欠けても歯周病、あるいは虫歯のリスクが高くなってしまうということです。
セルフケア
毎日の歯磨きのことです。毎食後、必ず歯磨きをしましょう。
歯ブラシ・歯磨き粉に加え、フロスまたは歯間ブラシを併用しましょう。
また、洗口液の使用も有効です。歯磨き方法は、歯科検診の際に歯科衛生士から教えてもらえます。
定期的な歯科検診
3カ月に1回を目安に、定期的に歯科医院で歯科検診を受けましょう。
虫歯や歯周病のチェックだけでなく、歯石取り、ブラッシング指導などが受けられます。
定期的に歯科医師・歯科衛生士に“見られる”ことで、セルフケアの意識も高まります。
定期的にレントゲン写真を撮ることで歯周病の進行具合を確認することができます。
近年、歯科のレントゲン写真から骨粗しょう症のリスクを判定できることもわかってきました。
特に歯周病は急になるものではなく、ごく緩やかに発症します。
小さな炎症のうちに適切に治療・指導が受けられることで、予防の確実性がより高くなります。